弊所ではCRDのMcSS中小企業経営診断システムを利用して5期分事業計画書を作成します。
1 CRDのNcSS中小企業経営診断システムとは?
本年5月より民間に開放された経営診断システム。これまで銀行、政策公庫、信用保証協会が融資判断に使って来たスコアリングモデルです。具体的にはデフォルトリスク、つまり融資を実行した場合、将来融資先が延滞するかしないかの信用度合いが偏差値となって表示されるシステムです。現在わが国最大の企業信用情報データベースとなっています。
これまでも企業の財務指標のデータベースは存在していましたが、このCRDのデータベースとどこが違うのでしょうか。それは、貸出の延滞データと企業の企業の財務諸表の推移との関連性を分析することで、どういった指標がどのような数値(推移)をすると企業はデフォルトを起こしやすいのか・・・その逆もしかり・・・であるかを判別する仕組みを持っていて、その精度が非常に高いという点から多くの金融機関が採用しています。金融機関はその偏差値をもとに1から9の段階で企業の財務格付けを行っています。
自社の偏差値を知ることができ、財務のウイークポイントを理解する。
①過去3期分の偏差値を把握
現状の偏差値と5期分の将来シュミレーションを確認することができます。
財務のウイークポイントを改善する計画を作成し、5期分の将来シュミレーションを行う。
②McSSで5期分のPL・BSの作成を行い理想的な財務改善方針を立てる
2 利用する企業側のメリット?
① 銀行が診ている偏差値が把握できること(財務の弱みがわかる)
この診断システム利用のメリットは、銀行が融資判断する際にどこをどう見ているのか・・・偏差値等がわかるこ
と・・・ 同時に銀行が利用しているデータベースで同業種比較を確認できることは、財務改善のポイントが絞れます。財務 改善を効率的に進めることで、偏差値がUP、格付けがUPすることでの融資条件が良化します。企業にとっての利用価値は高 いといえます。
② 偏差値数値から信用格付けが推定できます。その段階によっては融資形態(借り方、金利水準の適正化)を検討できま す。
③ 将来シュミレーションを作成することで「大枠」の事業計画のアウトラインが策定できます。(偏差値UPのための計画や ○年で偏差値50を目指すなど)その設定数値の根拠と目標値の妥当性の確認ができますので実現性・実効性の高い計画とな
ります。このアウトラインの計画をもとにした「詳細な計画」は新規の資金調達に有効です。(銀行は自行の融資総額がある
水準を超えると本部稟議になり、融資増額に際して本部説明資料として「5期分の事業計画書」を求める場合があります。)
3 金融機関からの評価は?
地方銀行をはじめとした地域金融機関は最近「地銀ベンチマーク」という金融庁の行政指針にどのように対応するかが大きな経営課題となっています。地域金融機関に様々な経営指標(ベンチマーク)を公表させて地域への金融支援、経営支援機能への対応の度合を比較することで金融機関の差別化を行い、地域の企業がどの金融機関と付き合ったらよいかを見て取れる仕組みづくりを始めようとの意図があるのです。具体的には次の表に掲げるテーマが公表されています。
金融仲介機能のベンチマークについて
共通ベンチマーク<5項目>
項 目 | 具 体 例 |
(1) 取引先企業の経営改善や成長力の強化 | 1. 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた取引先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)及び、同先に対する融資額の推移 |
(2) 取引先企業の抜本的事業再生等による生産性の向上 | 2. 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況 |
3. 金融機関が関与した創業、第二創業の件数 | |
4. ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース) | |
(3) 担保・保証依存の融資姿勢からの転換 | 5. 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース) |
上の表(一部抜粋)がそのベンチマークの内容です。5つの共通ベンチマークの最初の行に「取引先企業の経営改善や成長力の強化」の具体例として「経営指標・・・の改善や就業者数の増加が見られた取引先数・・・及び、同先に対する融資額の推移」とあります。銀行は、これらの指標改善にどのように取り組み、その成果をどのようにモニタリングしていったらよいのかに頭を悩ませています。
そこでこのCRDのMcssを使った5期分の事業計画策定とモニタリングを外部専門家に委託し財務改善や成長力の強化を図る。その過程で銀行は必要な金融支援を行っていく。これが理想の地銀ベンチマーク対応となるはずです。
一方で、このMcss診断で財務格付が判明するということは、例えば信用リスクが比較的に少ないという結果がでたのに保証協会中心の融資である場合、プロパーに切り替える等の是正を求めることもできます。財務改善が進めばより資金需要も旺盛になり資金繰りも安定しますから融資取引の健全度が増すことは金融機関にとっても総じてウエルカムではないでしょうか。とりわけ、偏差値が50未満の企業が50超を目指す財務改善施策に取り組むことには大きな意義があると評価するはずです。
以上、企業にとっても金融機関にとっても非常に有効なCRDのMcss中小企業経営診断システムを活用した事業計画書の策定について述べてきましたが、このシステムを利用することができる経営革新支援機関(認定支援機関)は全国で約400事務所。九州でも約30事務所(内 佐賀県では弊所を含め2事務所)と非常に限られた事務所であるのが現状です。理由は簡単で、このシステムを利用するには高額のライセンス料と利用料が必要だからです。一事務所が簡単に負担できる程度の金額ではないからです。ではなぜ弊所が利用できるのかといいますと弊所はこのライセンス資格を全国で最初に取得した経営革新等支援機関推進協議会(運営母体 株式会社エフアンドエム)に加盟しており、この協議会と業務契約を締結しているからなのです。最近、経営革新等支援機関推進協議会に加盟する事務所が急速に増加していますが、これも一要因だと思われます。
なお、CRDのMcSSに似たシステムとして中小企業庁から公表されているローカルベンチマークというのがあります。これも非常によくできた財務分析システムでどなたでも活用できることから中小企業庁も積極的な活用を呼び掛けているところで他の認定支援機関も積極的に活用されているようです。(無料)
しかしながらこのシステムの弱点としては、現状の財務分析を行うことはできますがCRDのMcSSのような財務改善を進めるための事業計画書策定にはやや不向きです。実現可能な財務改善を図るための事業計画書を策定し、経営者はこれに基づいた経営方針を従業員に伝え、企業一丸となって将来シュミレーションに沿った経営戦略を立てる。これこそがこれからの中小企業に求められるのではないかと思いますが金融機関が認めてくれるような高い精度ではないようです。
中小企業経営者の皆様へ
経営状況に改善が見られない、人手不足を補うために設備投資を行いたいが資金繰りが不安定だ、自社の状況を客観的に把握したい等のお悩みを抱えておられるようでしたら、是非、弊所と共に早期経営改善計画策定支援による事業計画書を策定してみませんか?必ずやお役に立てる事務所であると自負しております。
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